メンバー紹介

新しいかくの木のため、常に学びと行動を。

仕事でありながら人生を学ぶ場。目の前の患者を大切にし、制度の一歩先へ

薬剤師として25年以上患者さまに寄り添った中で、その⽣き⽅に学ぶことがとても多くありました。得られた経験は、また新たな機会に⽣かす。それは仕事でありながら学びであり、⼈との繋がりでもあり、⾃分の⽣き⽅にも関わっていく。そうした経験あっての職業なので、患者さまとお話しする際にはいつも礼を尽くすようにしていますし、⾃分の中にもさまざまな患者さまとの触れ合いや思い出が刻まれています。中でも、ある末期がんの患者さまのことが強く印象に残っています。

医療⽤⿇薬を使っている患者さまがお亡くなりになった場合、薬剤師・薬局は残った⿇薬を回収する義務があります。つまり故⼈のお宅に、注射等を引き上げに⾏くんです。その際に、ご家族と藤の花を眺めながら「これは主⼈が植えて世話をしていた」などの思い出話を聞くと、当初の私はつい感情移⼊してしまい、ときには涙がこみ上げることもありました。しかしある患者さまの奥さまからこんなことを⾔われました。「夫が亡くなった後、さまざまなサービスの⽅が使わなくなった物を引き上げに来るんだけど、その⼈たちが泣かれるんですよ。ありがたいと思うのですが、気が付くと私が慰める側になっているの」と。その⾔葉で気付かされました。私たちは、遺されたご家族の悲しみが少しでも和らぐように寄り添いながら、その感情を引き出してあげないといけない。沈黙の時間を含め、聴くことに徹しないといけない、と。薬剤師が終末医療に関わることは、これからますます増えていきますが、この経験は、患者さまやご家族に「寄り添う」とはどういうことなのかを、あらためて深く考える機会となりました。

現在、役員として下の世代の育成にもあたっていますが、現場の空気を感じるために、なるべく店舗などに赴くようにしています。現場の社員に、⾃分の学びや経験から特に伝えたいことは2つあります。「⽬の前の患者さまを⼤切にしなさい」ということ、そして「制度の⼀歩先を⾏きなさい」ということです。例えば初めて飲む薬を患者さまにお渡しして、3⽇後にちゃんと効いているのか、副作⽤は出ていないか、やっぱり気になるよね。だから薬を渡した後にちゃんと連絡を取って確認しようよ、と話すようにしています。かくの⽊では、これまでも介護保険制度の制定前から、患者さまのご⾃宅への訪問サービスを⾏っていました。今では薬局にとって在宅訪問は当然の業務ですが、当時はまだ珍しく制度の⼀歩先を⾏く取り組みであったと思います。⽬の前の患者さまにとって、それが本当に⼤切なことなら、ちゃんと実⾏して効果を検証し、国に意⾒を⾔えるような⾏動をとろう、という意識づくり。難しいことですが、⾃分の経験とともに後進に伝えていきたいと思っています。

この“戦う”薬局で、仲間とともにより良い医療の場をめざして

かくの⽊について、「こんなに丁寧な薬局は他にない」と⾔ってくださる⽅が沢⼭いらっしゃいます。先日、ある患者様がお見えになり、抗⽣剤が出ていたのですが、それ以外にも本当にちゃんと全部飲めているのかな、と思うぐらい結構な量の薬を他の薬局からもらっているようでした。よくよくお聞きすると「実は朝の薬を全く飲んでいない」とのこと。⼤切な⼼不全のお薬なのですが、体調が悪くなるので飲んでおらず、そのことを誰にも相談していないようでした。

かくの⽊では、普段から「何かあったらいつでも相談してください」と、連絡先を丁寧にお伝えし、「お⾝体のことで不安があるなら、遠慮しないで医師に相談してください。難しいのであれば、私たちから医師に⼿紙を書きます」ともお話ししています。その患者さまにもそのようにお伝えしたところ、「薬局は薬をもらうだけのところで、そんな説明を聞いたことがなかった」と喜んでくださいました。
こうしたことが起こってしまうのは、医師が限られた時間内で薬を飲む意味や必要性まで丁寧に説明するのが難しく、だからこそ薬剤師がその役割を担う必要があるのですが、そこが不⼗分で、患者さまに⼤切なことが伝わっていないことが理由だと思います。これは医療、薬局業界全体の課題かもしれません。

かくの⽊が、なぜ患者さまとそうした深い関わり⽅をするのかといえば、代々の役員が“まずは⽬の前の相⼿のことをひたむきに考える“という理念を持ち、そのために⾃らが率先して⾏動する姿を⾒せてきたからだと思います。例えば医療制度の存続のためにジェネリック医薬品を推進するのであれば、患者さまにおすすめする前に、どのように溶けるか、味はどうか、実際に確かめるなどしてデータをしっかり取得するようにしています。体調との兼ね合いなどから必要のない薬を削ることも我々の役割で、医師の処⽅に対して、時に「必要ない」と伝える。そこは医師との信頼関係も築きつつですが、代表の畑中はよく「戦え」って⾔うんですよ。“患者さまのために戦え”と。だから、それを意識するようにしています。かくの⽊のこうした姿勢や理念は、⾃分のめざす薬剤師像そのものであり、皆でより⾼みを⽬指すことができるやりがいのある場所なので、⾃分⾃⾝ここで働くことを楽しんでいます。

新しいかくの木を作るとともに、それにふさわしい人材を育てたい

今後、患者さまを待っているだけの薬局は必要なくなるのではないか、と思っています。地域住⺠に「かくの⽊があってよかった」「無くなったら⼤変だ」と実感いただけるかどうか。薬局の機能が健康サポート薬局、地域連携薬局、専⾨連携薬局など細分化される中、かくの⽊の薬局には検査機能を備えておきたいんです。なぜなら2022年から「リフィル処⽅
箋※」制度がスタートし、処⽅⽇数が⻑い場合だと9か⽉という⻑い期間、患者は診察を受けない可能性がある。医療機関には⾏かないが、薬局には薬をもらいに来られるわけです。

その間、服⽤中の体調変化や考えられる副作⽤などの聴き取りは現在ももちろん⾏っているのですが、それに加え薬剤師も何らかの判断基準を持ち、⾃信をもってアドバイスを⾏うことが必要です。そのため、病院に⾏かなくても薬局で検査が受けられ、検査値という客観的データをもとに患者さまへのアドバイスができるようになると良いと考えています。加えて在宅対応を強化したいですね。薬剤師の在宅訪問を必要とされる⽅が今後増えてくるなら、新堀店の他にもう1店舗、在宅に強い薬局が欲しいと思っています。あとは健康の⼤切さを発信する活動を少しずつスタートさせているところで、カフェのように気軽に来ていただける場も必要ですね。また新型コロナウイルスの検査事業等の対応で結果的に新たな患者さまとの接点が⽣まれたので、他局が⼆の⾜を踏む対応であっても率先して⾏い、その情報発信も並⾏して広く⾏わないといけません。

そして今後は、優れた薬剤師を育てるための教育も不可⽋です。⽬の前の患者さまを第⼀に考え、患者さまにとって本当に必要なことが何かを⾒極め、⾏動を起こす。そのためには、専⾨的な知⾒も⼈間性の⾼さも必要です。薬剤師はその意味で、真のプロフェッショナルでなくてはいけないと思っています。プロでなくては⾃らの決断に⾃信を持てないし、患者さまにも満⾜されない。患者さまとのコミュニケーションの取り⽅を学ぶことも必要ですし、またお薬を飲む動機付けのために、根拠を⽰して飲む理由を伝える知識と技量も必要。例えば薬の効き⽬などを時系列にグラフ化し、「今なぜこの薬を飲むのか」の説明をする。それを省いてしまうと、患者さまがしっかり飲まなくなったり、余らせた薬を「前と同じ症状だから、これ飲めばいいや」ということになる。こうした薬剤師の業務は経験に基づく仕事でもありますので、⾃分の得た知識や体験のエッセンスをどんどん伝えていかなければいけないな、と思います。

※リフィル処⽅箋とは、症状が安定している患者について、医師の処⽅により、医師および薬剤師の適切な連携のもと、⼀定期間内に処⽅せんを反復利⽤することができる仕組みです。患者にとっては、医療機関を受診する回数が減り、通院負担を軽減できるメリットがあります。結果として、医療費の削減につながることも期待されています。

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